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2011/01/18 (Tue) あなたへ

今夜も月がきれい


 うさぎはひとりぼっちでした。
そこには、うさぎには大きすぎるお城が建っており、古い樹がそれを囲むように生えていました。しかし、動物の気配はまるでありません。
うさぎは、自分がいつから此処にいるのかも分からず、何故生まれてきたのかも分からず、ずっと長い間ひとりぼっちでした。
うさぎのいるところからは、いつもとても綺麗な青い星が見えました。そこでうさぎは、その星に毎日お願いごとをします。
――誰か、話のできる友達ができますように


 ある日うさぎが朝起きると、それはそれは大きな生き物が隣にいました。うさぎは大変驚いて、そして恐る恐る話しかけました。
「あの、僕はうさぎです。君はいつ来たの?どうやって来たの?どこから、来たの?」
大きな生き物は、低く響く声でこたえました。
「地球から来た。わたしは恐竜。どうして此処にいるのか、それは分からない」
そして、あの綺麗な青い星を見つめました。
そのあと二人は友達になりました。お城は恐竜には小さすぎたので、うさぎは専ら外で過ごしました。


 「ねぇ、起きて、起きて」
恐竜はうさぎの声で目を覚ましました。
「なんだい、一体どうしたの」
「きみの、ほしに、ああ」
おびえているうさぎを不思議に思いながら恐竜が地球に目をやると、大きな星屑が地球に向かっていくのが見えました。このままでは、ぶつかってしまいます。

「ああ、壊れてしまうのかな、君の綺麗な星は、、、」
「大丈夫、壊れやしない」
恐竜はそう言いましたが、星屑が地球にぶつかった瞬間に大きな爆発が起きたのを見て、心底恐ろしくなりました。
それから二人はずっと地球をみていましたが、あの綺麗な青い星は生命の全てを失ってしまったように見えました。
「きっと、皆いなくなってしまったな」
ぽつり、と恐竜がつぶやきました。
「さみしくないの?」
そう、うさぎが聞くと、
「何故だか」
と恐竜は言いました。


 二人は色々なことを語り合いました。
どうして此処に在るのか?存在するということとは?認識とは?生とは?死とは?

「それでも僕は、僕たち二人が此処にいることを認識している。ああ、だから前よりも絶対に幸せだ」
と、うさぎは言います。
「比較しているのに、絶対とはおかしいね」
と、恐竜は笑います。


 そんな日々が長く続き、青い星も以前の輝きを取り戻しつつありました。しかしうさぎは、恐竜が痩せてきていることに気付いていました。そして、その理由も。
「君は、たんぱく質をとらないと死んでしまうのだね?」
「どうやら、そうらしいね」
恐竜はいつもの低い、落ち着いた声でこたえました。
「なら僕を食べてくれ」

「君など、小さすぎて腹の足しにはならない」
そう言って恐竜は大粒の涙をこぼしました。真上から降ってきた涙で、うさぎの体はびしょ濡れになってしまいます。
「ああ、みんな、死んでしまった。あの星は今も美しいね、きみ。私はあの星で確かに生きていた。それがもう、みんないなくなってしまったよ。今さら、とても、とても悲しい。悲しくて寂しい」

うさぎも悲しくなって、二人寄り添って眠りました。


 数日後、恐竜は静かに死んでいました。うさぎは、地球にお願いごとをします。
――お願い、連れて行かないで、僕の大事な友達なんだ


 いくつもの、長い、長い時が経ち、恐竜は骨だけの姿になってしまいました。
うさぎは巨大な恐竜の内部で、何故自分は生き続けているのかと問答を繰り返していました。時折、お城の屋根にのぼり地球を眺めます。
あの星は美しいね、と恐竜の言葉を思い出し涙を流すものの、その涙の粒は小さく、うさぎの体を濡らしはしません。

――君が、僕を認識してくれたから僕は僕でいられたんだ。今はもう、なんにもなくなってしまった。なんでもないものになってしまった。

うさぎは静かに目を閉じました。
――でも、僕は君のそばにいよう。君のいた世界を見つめていよう―――

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音乃 悠

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